みんなで大家さんはなぜ行政処分を受けたのか?公開情報を基に事案を紹介
※ファンドへの投資申込を行う際は、事前に詳細を十分に確認し、リスクを理解した上でのご決定をお願いいたします。投資後は"ほったらかし"で運用することが可能ですが、運用状況の確認のため、定期的にログインしていただくことをお勧めいたします。
※本記事に記載されている内容のうち、当社サービス以外の個別の商品・銘柄・企業名については、あくまでも参考として掲載しているものであり、当社はその商品、銘柄又は企業の株式等の売買を推奨するものではありません。 最終的な投資の実行は、ご自身の判断と責任の下で行っていただくようにお願いいたします。
最近「みんなで大家さん」が行政処分を受けたというニュースが話題になっています。「みんなで大家さん」の利用ユーザーのみならず、投資家の皆さんにとっても不安に感じられることでしょう。
不安に感じるため、今回の行政処分問題について調べようとしても、
「東京都などの公的機関のサイトでは、この行政処分の内容が分かりづらい」
「他のメディアの記事は私見が入りすぎて事実が見えにくい」
と感じた方も多いはずです。
そこで今回は、「みんなで大家さん」と同じく不動産特定共同事業者であり、不動産クラウドファンディングサービスを提供する当社が、「みんなで大家さん」の行政処分問題について、公開情報を基に事実のみをシンプルに紹介いたします。
記事を通じて、今後の投資判断の参考にしていただければ幸いです。
目次
みんなで大家さんの商品の特徴
※引用:みんなで大家さん
そもそも「みんなで大家さん」とは、不動産特定共同事業法に基づく不動産投資商品を販売している事業者が運営しているサービスの名称です。みんなで大家さんが販売している投資商品の主な特徴は、下記に挙げるものです。
- ・想定利回り:年6.0〜7.0%
- ・申込手数料:無料
- ・出資単位 :100万円から
- ・運用期間 :約3~5年
- ・分配回数 :年6回
- ・最低投資額:1口100万円から
※引用:みんなで大家さん
他にも、運用期間中でも運営会社に持分を譲渡することで現金化が可能なことも、大きな特徴の一つです。みんなで大家さんの運営会社は下記の2社です。(公式サイトに記載の情報引用)
運営会社 | みんなで大家さん販売株式会社 (販売代理人)※1 |
都市綜研インベストファンド株式会社 (営業者)※3 |
本社所在地 | 〒102-0084 東京都千代田区二番町12番地3 グレイス麹町3階 |
〒530-0003 大阪府大阪市北区堂島1-1-5 関電不動産梅田新道ビル12階 (旧名称:ザイマックス梅田新道ビル) |
支店 | 〒530-0003 大阪府大阪市北区堂島1-1-5 関電不動産梅田新道ビル12階 (旧名称:ザイマックス梅田新道ビル) |
※公式サイトに記載なし |
代表 | 代表取締役社長 栁瀨 鳳憲 | 代表取締役社長 栁瀨 健一 |
資本金 | 1億円 | 29億2330万9139円 |
許認可 |
宅地建物取引業免許 国土交通大臣(5)第6254号 |
宅地建物取引業 大阪府知事(3)第54991号 不動産特定共同事業 大阪府知事 第8号 |
社員数 |
51名(2024年4月現在) |
※公式サイトに記載なし |
設立 |
1998年※2 |
1999年8月 |
備考 |
2024年8月19日付でロンドン証券取引所に実質的に上場※4 |
– |
※1 参考:みんなで大家さん販売
※2 参考:みんなで大家さん販売
※3 参考:都市綜研インベストファンド
※4 参考:みんなで大家さん販売
また、みんなで大家さんは不動産の評価基準として、賃貸利益を基にしています※。そのため、売買市場の価格変動に左右されにくく、運用期間中の評価額も比較的安定しやすくなります。
※参考:みんなで大家さん
みんなで大家さんで今回生じた問題
不動産特定共同事業法に違反したため行政処分(30日間の一部業務停止命令)を受けた
みんなで大家さん販売株式会社と都市綜研インベストファンド株式会社それぞれが受けた行政処分の概要は以下の通りです。
運営会社 | みんなで大家さん販売株式会社 (販売代理人) |
都市綜研インベストファンド株式会社 (営業者) |
行政処分の概要 | 東京都から不動産特定共同事業法に基づく業務の一部停止命令。 (2024年6月21日から7月20日まで、新規販売などの一部業務を停止)※1 |
大阪府から不動産特定共同事業法に基づく業務の一部停止命令。 (2024年6月18日から7月17日まで、新規販売などの一部業務を停止)※2 |
※1 参考:東京都(PDFはこちら)、みんなで大家さん販売
※2 参考;大阪府(PDFはこちら)、都市綜研インベストファンド
東京都及び大阪府による両社宛の行政処分の文書の記載では、主に下記の事柄を理由として、両社は行政処分を受けています。
①開発計画の大幅な変更に伴う資産価値や収益性への影響に関する説明不足
②誤った不動産情報の提供並びに契約変更に関する不適切な手続き
③開発物件の形状・構造に関する記載不備
今回の行政処分の理由となった案件は、みんなで大家さんが販売していた「シリーズ成田」に関するファンドでした。このファンドは、成田空港周辺の開発プロジェクト用地を対象とした不動産投資商品です。成田市の空港周辺の土地を開発し、商業複合施設、ホテル、国際展示場、デジタルドームなどを建設する開発計画です。以下それぞれ処分理由に触れていきます。
①については、事業プランが、訪日外国人向けの観光産業拠点から食品産業の集積拠点へと変更されました。しかし、両社はこの重要な変更について投資家に充分な説明をしなかったようです。
※参考:日本経済新聞
②については、開発許可を受けていない土地を対象不動産として含めていたにもかかわらず、開発許可を受けているかのように誤った情報を提供していたものとみられます。さらに、この対象不動産の誤りを正すために他の土地と交換する際、本来は投資家からの契約変更の同意を得る必要があります。しかし、両社は投資家からの申し出がない場合に自動的に同意したものとみなしていたようです。
③については、投資家に交付する書面に、宅地造成工事完了時における形状・構造等を記載しなければならないところ、宅地造成工事完了前の形状の記載に留まり、記載に不足があったとのことです。
このように、不十分な説明や不適切な契約手続きの実施、誤った情報の提供を行ったまま、両社は「シリーズ成田」の販売活動を行っていました。
各行政は、上記を理由として行政処分を行いましたが、これらの処分を不服として「みんなで大家さん販売株式会社」が東京都に対して、「都市綜研インベストファンド株式会社」が大阪府に対して、それぞれ命令の効力停止の申し立てを裁判所に提起しました。これに対し一旦は申し立てが認められ、執行停止の決定が下されたものの、東京都・大阪府はこれを不服として即時抗告を行い、裁判所は執行停止の決定を取り消しており、業務の一部停止命令は有効なものとなりました。
※参考:日経不動産マーケット情報
行政処分の影響で470人以上の投資家から28億円以上の解約(持分の譲渡)請求があった
行政処分の発表からわずか24時間ほどで、これだけの解約請求が生じたとのことです。
※参考:日経不動産マーケット情報
しかし、解約の申し入れが殺到したため、「都市綜研インベストファンド株式会社」は一時的に解約申請の受付を停止しました。2024年7月29日現在では手続きが再開されているようですが※1、直近では4,000人の投資家から総額220億円あまりの解約請求が寄せられているとの報道もあります※2。
※1 参考:みんなで大家さん
※2 参考:日経不動産マーケット情報
みんなで大家さんの口コミ
今回の行政処分によってネットではどのような口コミがあるか気になる方のために、X(旧Twitter)の投稿をいくつか引用します。
「みんなで大家さん」が話題になってますね。
小旅行のついでに成田の現地を見に行きましたが、現場の完成度を見たら、期日着工は絶対無理と分かるものでした🧐
2年前の写真ですが、動画などでは今も変わってないので、間違いなく破綻します😇 pic.twitter.com/q1DJDw9XKM
— ニャオス@資産8千万&【TMF全力投資家】 (@nyaosu01) June 19, 2024
みんなで大家さん、毎年6月の決算公告を公表せず!😡🚨
出資者に何の説明もなく、混乱を招いてる🥵
被害額は2023年末に2361億なので
次は2400億は超えるか?!2021年 523億
2022年 895億 +1.7倍
2023年 1451億 +1.6倍
2024年 2400~2500億? +1.6~1.7倍か?#みんなで大家さん https://t.co/pVgHKsCM67 pic.twitter.com/JRdbhm0SY8
— 桃素敵 (@nicepeach1107) June 30, 2024
みんなで大家さん販売、業務停止処分の効力の停止(勝訴)に関するお知らせ pic.twitter.com/3fL9KOz8Gq
— 小野悠史はいつも不動産ニュースを探している (@kenpitz) June 20, 2024
まとめ
「みんなで大家さん」が行政処分を受けた原因は、主に下記に挙げるものです。
①開発計画の大幅な変更に伴う資産価値や収益性への影響に関する説明不足建設開発計画の変更に関する説明不足
②誤った不動産情報の提供誤の提供並びに契約変更に関する不適切な手続き
③工事の進行状況の説明不足開発物件の形状・構造に関する記載不備
そして、行政処分を受けた結果、470人以上の投資家から28億円以上の解約請求がありました。
不動産特定共同事業に投資する際には、投資家としての権利を守るために、重要事項説明や契約内容をしっかりと把握し、不明点があれば積極的に質問する姿勢が必要です。